障がいのあるお子さんのお母さんとお話しさせていただくと『疲れている』と感じていることがとても多いです。
『疲れている』を通り越して『疲弊しきっている』という方も少なくありません。
私も長い間、『障がい児子育て=大変➤疲労がたまる』と単純に思っていました。というか思い込んでいました。だから、ご家族の方が疲れ切った顔をされていると、「仕方ないよな」としか思えずにいました。
ある時から『障がい児子育て中の疲労・疲労感』の原因を解明したら、『疲労感解消方法』が見つけられるのではないだろうかと思いました。
というのも、ご家族の相談を受けていると、その『悩み』が尽きることはなく、一つ解消したと思っても、また悩みが湧いて出る。まったく違う悩みや関連した悩みや、とりあえず本当に尽きることがなく湧いてくる。
確かに『障がい児子育ては大変』でも、だからといって『大変が当たり前』で済まされることではないと思いながら、『疲労感の原因』について向き合ってみようと思いました。
また『疲労』と『疲労感』については、捉え方がに違いあるため、この中ではあえて『疲労・疲労感』と書かせていただいています。
- 『疲労・疲労感』について
- 身体的疲労原因
- 精神的疲労原因
- 障がい児子育ての疲労・疲労感の原因
『疲労・疲労感』について
疲労には身体的原因と精神的原因がある。
身体的疲労は最適な身体能力を維持するための筋肉の一時的な能力の低下であり、強い身体運動によってよりひどくなる[1][2][3]。精神的疲労(英語版)は長期の認知活動が原因となる最大認知能力の一時的低下である。精神的疲労は傾眠(眠気)、無気力、選択的注意の疲労(英語版)として現われうる[4]。
医学的には、疲労は非特異的症状(英語版)である。これは、多くの考えられる原因があり、多くの異なる状態を伴うことを意味する。疲労は徴候よりはむしろ症状と見なされている。これは、疲労が他者によって観察できる客観的なものではなく、患者によって報告される主観的感覚であるためである。疲労と「疲労感」はしばしば混同される[5]。
疲労は疼痛、発熱と並んで生体の3大危険信号と言われ、身体にとって生命と健康を維持する上で重要な信号のひとつである。健常者における生理的疲労は、精神あるいは身体に負荷を与えた際に作業効率(パフォーマンス)が一過性に低下した状態と定義できる。通常、休息を求める欲求と不快感(いわゆる倦怠感)を伴うことが多い。病者における疲労(病的疲労)では、悪性腫瘍や糖尿病、慢性疲労症候群、多発性硬化症のように、負荷の少ない状態でも慢性的な作業効率の低下や倦怠感を認めることもある。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウィキペディアの紹介がわかりやすかったので引用しましたが、『疲労』には「身体原因」と「精神原因」がり、主観による部分が大きいために『疲労』と『疲労感』をわけるのが難しいとされます。
この記事の中では、『障がい児子育て』をされているご家族が「長期的負担」が精神的にも身体的にも大きいため、あえて『疲労』という言葉を使わせていただきます。
身体的原因
障がい児子育ての『身体的疲労原因』について考えてみようと思います。
興味深い分析で、『 重度・重複障害児の母親の生活時間』を『生理的生活時間』『収入労働時間』『家事的生活時間』『社会的・文化的生活時間』に分類したものがありました。
この分析の考察から、健常児であれば使えるであろう公的なサービスや福祉サービスを活用したとしても、障がい児と母親との分離できる時間は限られているということが書かれています。
この研究は対象が『重度・重複障害児』になるので、障がいの状況・家庭も含めた周囲の環境によっても大きく変わると思いますが、『育児(介護)』が日常的、継続的に行われるというところは『障がい児子育て』の共通点かと思います。
そんな障がい児子育て中の母親は極端に『社会的・文化的生活時間』が少ないという結果が出ています。
引用:阿部真理子, et al. 重度・重複障害児の母親の生活時間の事例分析: 家事・育児以外の活動を可能にする視点から. 學苑, 2007, 796: 98-105.
この結果からもわかるように、障がい子育て中は日常的に長期的に物理的な『時間がない』状態です。また、家事に加えた『育児からの介護』が長期間続くため、疲労感が蓄積されると考えられます。
また、『育児からの介護』の内容も、身体的な負担が多いです。
例えば、パニック状態の息子を制止する、動けなくなった娘をおんぶして促す、身辺介助等々。
こういった日常的な過度な体の負担が、『疲労感』に繋がっていると思われます。
精神的原因
発達障害幼児の母親の育児ストレスおよび疲労感(渡部奈緒, 岩永竜一郎, 鷲田孝保 - 小児保健研究, 2002 - nagasaki-u.repo.nii.ac.jp)
の研究によると、『対人・知的障害群は、運動障害群に比べ高ストレスの項目が多く、疲労感も強かった。』と結果が出ています。
また考察として、『見た目でわかりにくい障害の場合、時には家族からも理解を得にくいことも,母親の育児における孤立感を助長したと考えられる。更に広汎性発達擬害児や精神発達遅滞児は、運動等障害児に比べ、発見、診断が遅れ、専門機問との関わりが遅れることが母親の孤立感を強くしたと
推察される。』と書かれています。
この研究結果を、自分の実体験や相談に来られるご家族の状況に照らし合わせると
『周りからの理解』『孤立感』『専門的アドバイス』『専門機関とのつながり』といったことの状態が『疲労の精神的原因』になっていることが考えられます。
また、この研究の中で『行動障害を示す子どもの母親は、周囲の無理解と非難の為、孤立に苦しんでいる。』とも記載されています。
確かに『行動障害を示す子どもの家族』は常に、その行動からの悩みと周囲からの二次的なストレスにさらされている状況が多いです。
障がい児子育ての疲労・疲労感の原因
『身体的疲労原因』『精神的疲労原因』について触れてきましたが、障がいの状況、周囲の環境によっての違いはあるが、身体的疲労原因と精神的疲労原因が『健常児子育て』と比べると『障がい児ならでは』の特別な原因が多く、またこれが日常的・長期的であることがわかりました。
原因については、またの機会に細分化していくことも必要だと感じています。
次回の記事では、ではこの『障がい児子育て特有の疲労感』をどのように解消していけばよいのかを考えていきたいと思います。